Visby, Gotland 1

バルト海の楽園
ゴットランド島

ゴットランド・ヴィスビーの旅 - 前編 -

ストックホルムから南へ200km。バルト海の楽園、ゴットランド島〈Gotland〉
バルト海に浮かぶスウェーデン最大の島「ゴットランド」は、スウェーデンに憧れる誰もが、この地を訪れたいと願っている島。
西のヴィスビー〈Visby〉は、3.4kmの城壁に囲まれた中世の面影を色濃く残す街で、スウェーデンの世界遺産のひとつ。 そして、13歳の魔女が空から舞い降りた「海の見える街」のモデルでもあります。

「魔女の宅急便」の街、コリコを探しに。

2015 Photo & Text_Scandinavian fika.

Visby, Gotland 1

「魔女の宅急便」の街、コリコを探しに

まだ北欧もスウェーデンも、どこにあるかもわからなかった小さな頃。夢中で観たアニメ『魔女の宅急便』。 満月の夜。13歳の魔女のキキが空飛ぶ箒にのってたどり着いたのは、海の見える街「コリコ」。相棒の黒猫のジジと、ラジオから流れる『ルージュの伝言』……
いつからだろう。あの街が、ストックホルムに見えてきたのは。旧市街の狭い路地を、キキが箒にのって飛び回っているように見えたのは……。

ストックホルムから南へ200km。ニュネスハムン〈Nynäshamn〉から船に乗り、バルト海の向こうに見えてきたのは、スウェーデン最大の島 ゴットランド島〈Gotland〉。西の港に着くと、目の前にはオレンジ色の屋根が建物が並び、遺跡のような教会の跡が屋根から顔を出しています。ここは、ゴットランド島の中心部。中世の面影を色濃く残す世界遺産の街、ヴィスビー〈Visby〉。
きっとスウェーデンに憧れる誰もが、キキのように、この地を訪れたいと願う ゴットランド。『魔女の宅急便』の舞台のモデルとなったヴィスビーは、私に魔法をかけて、13歳の子供の頃に戻してくれます。
空にも舞い上がる気持ちで旅に出た、スウェーデン・ゴットランド。海の見える街、コリコを探しに。

(ジブリ・アニメ『魔女の宅急便』の舞台となった海の見える街は、スウェーデンのストックホルムと、ゴットランド島のヴィスビーをモデルにしたといわれています) 

バラのつぼみ

「バルト海の楽園」とうたわれるゴットランド島。気候が温暖で雨が少なく、北欧のリゾート地としてとても人気があります。この島で短い夏の休暇を過ごすことは、スウェーデン人の憧れだとか。
ゴットランド島へは、ストックホルムから飛行機に乗ってわずか45分。でも、北欧数カ国をめぐる短い旅の中では、なかなかスケジュールが組めず、ずっと遠い島でした。
初めてゴットランドのヴィスビー〈Visby〉を訪れたのは、6月の夏至祭のころ。ゆったり船旅を楽しみたかったので飛行機は使わず、ストックホルム中央駅からバスに乗って1時間。南西の港 ニュネスハムン〈Nynäshamn〉へ。そこからヴィスビー行きの大きなフェリー、デスティネーション・ゴットランド〈Destination Gotland〉に乗って約3時間〈毎日運航〉。バルト海を南へと進みます。

「バルト海の楽園」を目指し、11:25にニュネスハムンを出発したフェリーですが、進めば進むほど青い空と海が消え、だんだん雲行きが怪しくなってきました。14:40にヴィスビー着くころには、黒い雨雲が島を覆い、とうとう雨が降ってきました。
夏至祭が近いからか、人も少なく静かで、楽しみにしていたアイスクリーム屋さんも空いていません。ヴィスビーの景色を楽しむ間もなく、雨がひどくなる前にホテルに駆け込みました。ヴィスビーはバラの都だと聞いていたけど、バラはつぼみで、まだ咲いていません。
夢のゴットランドにたどり着いたのに、どんより重たい気持ち。ベッドに横になったら、疲れて眠ってしまいました。

宿泊先のホテル、ベストウエスタン ストラント〈BEST WESTERN STRAND〉には街を一望できるテラスがあります。目が覚めて窓の外を見ると、雨が上がっていたので、外のテラスに出てみることにしました。
雨が止み、雲が流れ、光がさすと、おぼろげだった街の景色がはっきりと輪郭をなして見えてきます。目の前に、美しい中世のヴィスビーの街がよみがえってきました。それはまるで魔法のように、赤や黄色や紫のバラのつぼみが、いっせいに花ひらいたのです。 

ヴァイキング時代

ヴァイキング時代。12世紀から15世紀にかけて、ハンザ同盟の貿易港として繁栄してきたヴィスビー。全周3.4kmの城壁に囲まれた、中世ハンザ都市の特徴を色濃く残す街は、スウェーデンの世界遺産のひとつになっています。

雨が上がったので、ホテルを飛び出して、城壁に囲まれた世界遺産の街を散策します。
ホテルの前のストランド通り〈Strandgatan〉には三角屋根の可愛らしいお店が並んでいて、キキが箒に乗ってスイスイ飛んでいそうな雰囲気。約800年前に造られたという薬局は凸凹した頭が印象的で、今はアパートとして使われているのだとか。
夏至祭が迫った夏休みからか、いつもは観光客で賑わうヴィスビーも静か。あんまり人の気配がしません。それでも、ふらっと石畳の小道に入れば、どの家にもハッとするほどかわいい扉があって、軒先には必ずバラの花が咲いています。温暖なゴットランド島では、街角に植えられたバラの花が5月中旬から11月頃まで咲いているそう(7月が見頃)

ゴットランド シープ

ホテルのすぐ近くには、バラの咲き誇る漁師の小路〈Fiskargränd〉や、昔の火薬塔〈Kruttornet〉、アルメダーレン公園〈Almedalen〉があり、草花や海の景色に癒されます。

城壁の門では、ほほえましい羊の像を見つけました。島の紋章にも使われているゴットランドシープ。スウェーデンのゴットランド島にしか生息していないゴッドランドシープの毛は、上質な羊毛で島の特産品。くるっくるっとした毛は、とっても柔らかくて愛らしい。
ヴィズビーの街にはゴットランドシープの羊毛を使った洋服屋さんや、ゴットランドシープをモチーフにしたグッズもたくさんあるので、ぜひお土産に探してみて!

高台から望む ヴィスビー

17世紀後半、ハンザ同盟の衰退ともに朽ち果てたヴィスビーの教会。かつては城壁の中に17あった教会は、廃墟となった今も、ヴィスビーの象徴として観光客の人気スポットになっています。廃墟の教会でオペラやコンサートが開催されたり、レストランやホテルとして使われていたり。廃墟めぐりも、ヴィスビー観光の楽しみのひとつ。
ヴィスビーのほとんどの教会が廃墟となった中、1225年にドイツ人商人の教会として建てられたサンタ・マリア大聖堂〈S:ta Maria domkyrkan〉だけは唯一壊されず、昔のままの姿で残っています。大聖堂を彩るステンドグラスには、ヴィスビーに似た架空の町の没落と再生が描かれているそう。
サンタ・マリア大聖堂に来たら、ぜったいに見てほしいのが高台からの景色!大聖堂の裏手の階段を見つけたら、迷わず上ってみて!
高台から望むヴィスビーの街の美しいこと。オレンジ色の屋根の中に見える廃墟の教会。その向こうにはバルト海が広がります。絵画のような世界。そこに立てば、ふわっと空へ飛んで行けそうな、舞い上がる気持ちになるのです。

セント・ニコライ教会

高台から見たヴィスビーの絶景の中でも、ひときわ目を引く存在だったのが、バルト海と向かい合うように建つ廃墟の教会、セント・ニコライ教会〈S:t Nikolai Kyrkoruin〉。1230年に建てられたドミニコ会の修道院 セント・ニコライ教会は、1525年に破壊されてしまいましたが、石を花形にくり抜いてつくられた円形の花窓 ローズ・ウィンドウは今でも見ることができます。オペラも開かれるという教会では、この日も夏至祭のイベントの準備が行われていました。
セント・ニコライ教会の近くにあるセント・クレメンス教会〈S:t Clemens Kyrkoruin〉は、なんと ホテル・セントクレメンス〈Hotell St Clemens〉と中庭でつながっています!ホテルで滞在しながら、美しい廃墟の教会で優雅に過ごすことができるそう。 廃墟の教会は他にも、大広場のサンタ・カタリーナ教会〈S:ta Katarina Ruin/カーリン教会〉やセント・ラルス教会〈S:t Lars Ruin〉があり、夏の間は自由に見学することができます。

ヴィスビーのフェリー発着所から、街の中心のストラ大広場〈Stora Torget〉までは歩いて20分ほど。3.5kmの城壁の囲まれた街は、歩いて十分周ることができます。大広場から北のエリアには廃墟の教会が多く点在し、撮影スポットもたくさんあります。大広場からから南のエリアはにぎやかなショッピングストリートがあるので、お土産探しやフィーカにおすすめ!

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ヴィスビーのジジ

「キキのパン屋はどこかしら?」と探したくなるほど、家や建物が素敵なヴィスビー。ピンクの扉に赤いバラが咲くおうちや、ハートの窓の可愛いおうち。 街中がときめいていて、のんびり散歩しているだけでも、ぽわんと幸せに包まれます。
黄色の古い扉の前にちょこんと猫が座っていて、黒猫でもないのに、なんだかジジに見えてきました。話しかけたら、じーっとこっちを見て、首を傾げるように、のそのそとどこかへ行ってしまいました。
ヴィスビーで猫と出会ったら、その子はきっと、わたしのジジ。みんなジジに話しかけちゃう。

Bakfickan

バックフィッカン

廃墟の教会をめぐったら、もうお腹はペコペコです。楽しい旅の続きは、明日にとっておきましょう。ディナーはストラ大広場〈Stora Torget〉にある島の誰もがすすめる人気のレストラン、バックフィッカン〈Bakfickan〉へ。庶民的な雰囲気が素敵で、店員さんがとにかく優しくてフレンドリー。
シロマスの卵の前菜も、フライドニシンとマッシュポテトもめちゃくちゃ美味しかった!!そして、付け合わせのクネッケがもうパリッパリッで最高でした!(クネッケブレードは、クラッカーのようなライ麦の乾燥パンのこと)
魚料理の美味しさと店の雰囲気に感激して、次の日の夕飯もバックフィッカンへ出かけました。調子に乗って「今日の一番のおすすめをください」とオーダーしたら、でっかいカニが丸ごと出てきて、食べるのに悪戦苦闘。はずかしいくらい、みんなの注目の的でした。